1999年7月4日(日) 東芝EMI『謎のM@M戦略』


 6月30日に新ユニット“M@M”の『Miss Entertainer』が発売された。

チェキッ娘プロジェクトのユニット戦略

 チェキッ娘は2ndシングルからグループ内で結成したユニットをカップリングに添える形を取り始めた。下川みくに・熊切あさ美・町田恵による“NEOかしまし娘”、上田愛美・久志麻理奈・佐々木絵美子による“NEOちゃっきり娘”、矢作美樹・町田恵による“リトルマーメード”をはじめ、アルバムにもいくつかのユニットが組まれている。こういった試みは今回が初めてであり、私たちを楽しませてくれている。

 おニャン子クラブの時は高井麻巳子・岩井由紀子の“うしろゆびさされ組”、樹原亜紀・名越美香・立見里歌・白石麻子の“ニャンギラス”、工藤静香・生稲晃子・斉藤満喜子の“うしろ髪ひかれ隊”の3ユニットが結成され、オリコンでは1位ないし2位にランクインされている。

 今回の“M@M”の場合はおニャン子の時と同様、本体シングルのカップリングではなく完全に独立したシングルデビューとなっている。実質的に下川みくにに続く正式デビュー2組目ということになる。併せてすでに五十嵐恵・熊切あさ美・森知子のホリプロ所属3人組による“METAMO”というユニットの8月デビューも決定している。

M@MがなぜM@Mでなくてはならなかったのか?

 今回のM@Mのデビューは東芝EMIからとなっており、従来のようなポニーキャニオンとは少し戦略が違うようだ。プロデュースもSUPERCARによるものであるし、曲調などもかなり違っている。また、サンシャインのイベントを皮切りに、関東地区以外でのキャンペーンも計画され、チェキッ娘全国展開の布石を打っているようにも見える。

 おニャン子の時の話をすれば、第一弾のソロ・河合その子はCBSソニーから行われており、その後、国生さゆり、城乃内早苗、渡辺美奈代などの大物がそこからデビューをしている。キャニオンレコードからの発売とそれ以外からの発売は実際のところほぼ半々であった。

 ではなぜ今回はチェキッ娘からソニーミュージックエンターテイメントからのデビューがないのか、という疑問が当然のことながら生じる。これは私が思うにスポンサーがドリームキャストのセガであるため、プレイステーションのソニーグループとの兼ね合いだと思われる。

 ある掲示板に「藤岡麻美は東芝EMIお抱えだから」などという書き込みがあったが、それが本当だと仮定して、なぜ藤岡麻美のソロではなく、オーディションで小林裕美を選んでまで東芝EMIはユニットデビューという形をとったのだろうか?

 下川みくにのソロデビューは売上として2万枚強を記録したが、彼女の実力やバックグラウンドのことを考えると満足のいかない数値であることは間違いない。私が思うに東芝EMIはこの客観的事実を見て、「藤岡麻美ソロデビュー」のリスクを避け、新しいアイデアで勝負することを決めたのだと思う。

情報化時代の情報戦略

 そして考え出されたのが「シークレットプロモーション」である。『謎のユニットM@M』ということで番組とレコード会社のタイアップのもと「予想コンテスト」が行われることになった。戦略的には「謎のユニット」と「チェキッ娘」の相乗効果を狙ったものだと思われる。情報を小出しにすることで話題性を作るというアイデアとしては面白い戦略ではあったと思う。

 この投票は、結果として情報量の差で明暗がくっきりと分かれた。テレビしか情報源のないアナログ派は劣性でどちらかというと「藤岡麻美&野崎恵」の票に集中したようだ。そして、インターネットを駆使するネット系のファンは様々な怪情報が飛び交ったりする中、番組側からの「HEY!HEY!HEY!」観覧招待メールや東芝EMI関係者からの書き込み等でいち早く正解の票を入れることができたようだ。

 こういった情報戦略は確かに面白いと思う。たぶんおニャン子時代に同じことをやったら、きっと大当たりしたと思う。当時は本当にアナログの時代で、情報源がテレビかラジオしかなかった時代。わからないことがあったらクラスの友達に聞く、知らない人は興味を持つ、クラス中で話題になる。このようなことが全国各地で起きたためにおニャン子クラブは大ブームとなった。

 しかし、時代は情報化社会。必要な情報は日時場所を問わずその気になればどんな手段をとっても得ることができる。チェキッ娘の追っかけをしてなくても、追っかけ情報が載っているサイトを見ていればレアな情報はいくらでも得ることができる。最新シングルの情報もラジオ出演の情報も、番組観覧ときのことも、自分が興味を持つ前の頃の情報も何でもインターネットで得ることができる本当に便利な時代である。

 ただ、この便利な「情報デジタル化時代」は逆に「人を動かなくさせている」ということにも気づいていただきたい。アイドルの世界では、毎年多くの人がデビューし、次々と消えている。そして、情報化が進むと同時に、現在はアイドル乱立時代でもある。とにかくあの頃のようにアイドルが少なかった時代とは全く違うので、大きさの決まっているアイドル市場で確固たる地位を築くことは容易ではない。

 とにかくこのサイトをはじめとして、本当に多くのサイトがチェキッ娘をいろいろな意味で後押ししている。情報の多様化時代であるからこそ、多種多様な方面からチェキッ娘の知名度をスタッフサイド、ファンサイド両方からあげる努力が必要なのかも知れない。

 以上、今週のコラムでした。

1999年7月4日 BATCH



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